「日本の農業は海外と比較して〇〇〜」と言われて久しい今般。でも比べられるのはオーガニックの普及に関してや、農薬の使用量等結構テンプレートが決まっています。もっと様々な視点から各国を比較すると新しい発見があるかもしれません。
比較対象
では、各国の現在値を捉えるべく今回は
🇺🇸アメリカ
🇮🇹イタリア
🇳🇱オランダ
🇨🇭スイス
🇩🇪ドイツ
🇯🇵日本
🇫🇷フランス
この7カ国を抜粋して見比べてみました。
オーガニック先進地域として名高いEU各国に、農業生産額の大きなアメリカを加えています。一般的にも認知度の高い国々なのでイメージもしやすいですね。
それでは見ていきましょう。
① 農業人口1人あたり農地面積
その国の農家1人が、平均でどのくらいの田畑で農業をしているか。やはりアメリカは壮大で、日本の30倍の面積を誇ります。
しかし国土面積が日本とほぼ同じドイツと比較してもその差は10倍以上。日本の農家は他6カ国と比較して小さい面積で農業を営んでいることが伺えます。なぜでしょうか?
② 国土面積と農地面積
国ごとの国土面積と農地面積を見てみましょう。やはりアメリカ、とてつもない大面積を誇っています。一方、国土面積に対する農地面積の割合を見てみると、アメリカや日本は国土における耕作可能な農地が10%台と他と比べ小さいようです。
ドイツ、フランス、イタリア、オランダは20〜30%台と結構大きめ。しかしスイスは日本とほぼ同じくらいの割合です。
スイスと日本は国土の約7割が山岳地帯であることからも、農地として利用できる面積がかなり限られた国土と言えるでしょう。
アメリカの農地面積割合が17.24%と案外高くないのは意外でした。いや、十分ありすぎるからなのか…?
③ 農業人口と総人口比率
国ごとの総人口に対する農業人口の割合を見てみましょう。ここでの「農業人口」は農林水産業も含んでしまうのでその点はご容赦ください。
さて、アメリカがトップになるのはもちろんなのですが、意外なのは日本が2番目につけているところで、比率で言えばトップ。農地面積割合が同等のスイスと比べても明らかに農業人口の密度が高いようです。
農地面積はスイスと日本で10倍違いますが、農業人口は実に24倍の差があります。
④ 総人口と農地面積
総人口と農地面積を並べてみましょう。アメリカはグラフに収まりきらないのでさておいて…
国が抱える人口に対して、食料を生産できる農地面積がどのくらいあるのかが読み取れます。単純な比較では断定こそできないものの、食料自給率の高い国はそもそも人口に対する農地面積が大きい傾向にあるようです。
フランスは日本の約半分の人口ですが農地は4倍以上。農家一人あたり農地面積も14倍なので、広大な面積で効率的な農業が営めるのではないかと推測できます。日本は6カ国の中で最も人口の多さに対して小さい面積で農業をしている国といえます。
⑤ 国内総生産(GDP)と農業生産額
国内総生産(GDP)と農業生産額ですが、農業生産額が全体に占める割合はどの国においても1%前後と極めて小さなものとなっています。農地面積や農業人口に違いがあっても、その比率が一様に低くなっているのは興味深いですね。
これは開発途上国との違いが気になるところですがまたの機会に。
⑥ 農地面積1haあたり農業生産額
では農地面積1haあたりの農業生産額はどうでしょうか?
この項目は高度な技術を持った施設栽培の盛んなオランダがトップかと思いきやスイス。その次に日本が来ている様相です。比較的単収の低い穀類の生産が盛んなためか、アメリカは面積あたりの生産額がかなり小さくなっています。各国の主要農産物の違いが数値に影響していそうですね。
⑦ 食料自給率
最後に皆様ご存知の食料自給率を見てみましょう。穀物生産が盛んで圧倒的面積を誇るアメリカは堂々の1位。これだけが理由ではないですが、農地が国土の3割を占めるフランスもかなり高い数値。
少し目を引くのがオランダの生産額ベースの自給率が飛び抜けています。
高度な施設園芸によって人口が集中する大都市向けに花きや野菜などの比較的単価の高い作物を産出する都市近郊農業が発達していることの裏打ちでしょうか。
日本はカロリーベースで最下位。当該自給率の算出方法には問題があるものの、自給率をある程度のところまで引き上げる必要はあると思います。
ただ上記の農地面積や農業人口だけでなく、生産品目や天候、政治的要素等まで勘案してどのようにしていくかを現実的に考えていくことが求められていると私は考えます。
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