定期的にSNSに現れるホタテパウダー。農作物に付着した農薬を落とせるということで一部で話題になっているようです。しかしよく見るのは浸けた後の写真だったり、漬ける前後の写真があってもサンプルが1つ(例えば、市販の野菜だけの画像ないし動画)しかなかったりと、検証としては今ひとつモノ足らないな、というのが正直なところ。
そこでホタテパウダーの効果を比較し、そもそもホタテパウダーとは何なのか、なぜ殺菌洗浄できるのか、本当に安心安全なのか、その成分もしっかり調べていこうと思います。今回は実験編ということでよろしくお願いします。
ホタテパウダーの安全性を調べ尽くした(究明編)はこちら↓
実験に際してのサンプルを検討
本当に農薬が剥離して浮き出てくるのかをチェックするためには、農薬を使用した慣行作物と、農薬を全く使用していない無農薬作物を用意しなければなりません。この無農薬作物というのが曲者でして、産直・産直ECで売られている無農薬作物だと本当に農薬が使われていないのかは提示された情報を信じるしかなく、露地栽培において隣接畑からドリフト(飛散)してきた農薬がかかってしまっている可能性を否定できません。
ここで役に立つのが私が家庭菜園で育てていたイチゴ(品種:よつぼし)です。
記事リンクも参考にして頂きたいのですが、私の育てるイチゴは
①農薬非処理の種から育てたため、苗を買った時点での農薬汚染の心配がない ②セラミスという無菌&無栄養の無機培養土を使っているため、土壌残留農薬汚染の心配がない ③完全室内栽培のため、他からの飛散農薬汚染の心配がなく病虫害も出にくい
上記のように正に『本物』の無農薬野菜に相応しいイチゴという自負を持っています。ドヤッ
このイチゴと、別に市販のイチゴを購入して比較実験を試みましょう。
イチゴの殺菌洗浄比較に挑戦
家庭菜園の無農薬イチゴと、市販されている愛知県産イチゴあきひめを用意しました。後者については農薬を使用している旨を確認しておきました。上記2つのサンプルを使用してホタテパウダーでの除菌洗浄を試みます。実験前というのはいつもワクワクしてしまうものです。
実験用具はキッチンハイターに浸けよく洗い乾かしたものを使います。2種類のイチゴは少しサイズに差があったため、よつぼしを3つ、あきひめを2つ用意しました。ホタテパウダーは健康ラボさんのホタテのおくりものを使用します。
注意書きに「万が一本品が目や喉の粘膜に付着した場合は、多量の水で洗い流してください」とあったので、手袋とマスク、ゴーグルを着用して作業を進めます。安全第一です。
ホタテパウダーを開封してみる
性状はいわゆる「粉」で、非常に軽いです。埋まっていたスプーンを取り出した時に結構空気中に舞い上がってしまっただけでなく、そこそこ周りに落としてしまいました。私が不器用だったからかもしれませんが、スプーンは外付けにしてくれた方がありがたい気がします。まあそれでも付属して頂けるだけ感謝しなければなりませんね。
前述の通り注意書きには万が一眼や喉の粘膜に付着した場合の対処法が書かれていたのですが、これはおそらく「万が一」ではなく頻発しそうな粉立ちの良さです。成分について安全性をより詳細にチェックしておいた方が良さそうです。
3g測る時に手元が狂ってだいぶ散らばってしまいました。嫁さんや子供たちを最初から退避させておいて正解でした。使ってみるとわかるのですが本当に舞いやすくちょっと扱いを誤るとフワっと空中を漂います。
気を取り直してホタテパウダーは水2Lに対して3gを入れます。水に対して0.15%の濃度になるということですが、今回はビーカーに100gの水道水を入れ希釈しなければなりません。ちょっと微量すぎて計測精度が落ちそうなので、2Lの入れ物を用意して水溶液を作ってからビーカーに移すことにしました。その方が希釈倍率も一定になるのでより正確な実験ができそうです。決して準備不足だったわけではありません。
希釈ついでにpHを測定してみました
未使用のお茶用ピッチャーがあったのでこちらで希釈します。2Lあたり3gを投入してガラス棒でかき混ぜると、全体が白く濁った水溶液が出来上がります。こちらをビーカーに移していきます。
ついでにpHメーターで測定すると11.68でした。商品説明書にはpH12.5〜13.2の強アルカリ水になると記載されているので、実際はホタテ貝殻の焼成段階で生じた不純物が邪魔をしているか、このpH計の校正が上手くいっていない可能性が考えれられます。校正し直すのも面倒なのでpH試験紙を用いて確認してみましょう。
pH試験紙で色を確認すると、大体ph12〜13付近を示しました。やはりpHメーターがズレているのかもしれません。商品説明書通りのpHとなりましたので、ホタテパウダー自体は問題なさそうです。
今回は対照実験として
①完全無農薬イチゴ
②慣行栽培イチゴ(農薬使用)
③検体なし(水溶液のみ)
3つのビーカーを用意しました。SNSなどで良く見る油膜のようなものが何なのか、これである程度はっきりするのではないでしょうか?
さあ実験開始です!
イチゴ投入
実験が始まりました。説明書通り、10分間付けて様子を見ます。
時間経過後はどうなっているのでしょうか。
こちらは①無農薬イチゴです。どうした無農薬!
明らかに何か油膜のようなものが浮いています。これが使用していない農薬でないことは確実ですので、素人考えで恐縮ではありますがアルカリ性によるイチゴ表面の油脂成分や細胞壁中のペクチンが分解されて浮いてきたのでしょうか?
少しは汚れなどが浮いてくるとは思っていたものの、これだけがっつり出てこられると流石にヘコみます。
続いてこちらは②慣行栽培イチゴです。こちらもはっきりと油膜のようなものが浮いています。これがイチゴ表面のワックス分を溶解して出てきたものであれば、そこにある農薬成分は除去できたと判断して良いのかもしれません。こちらは想定通りです。
さて、問題はこちらです。何も入れていない検体なしの水溶液には、確かに油膜のようなものが水面全体を覆うくらいに浮き出ています。これには驚きました。
考えられるのは、今回水道水を利用したことによって塩素やミネラル分と反応したか、ホタテパウダーの不純物が浮いてきたか、水溶した除菌洗浄成分が空気中の何かと反応してできたものか、そんなところではないでしょうか?
どちらにせよ今言えるのは、
ホタテパウダーに漬け置きして浮いてきた油膜のようなものの確認によって、「農薬が除去できた」と断言することはできない
ということになりそうです。
まとめ
ちょっと信じられなかったのでもう一度シャーレに水溶液を作ってしばらく置くと、やはり時間経過とともに油膜のようなものが形成されていきました。
如何でしたでしょうか。無農薬のイチゴでもあの様に油膜が浮いてしまえば「農薬使ってるじゃないか!」と誤解されかねないレベルでした。しかし現状、ホタテパウダー自体が水溶液を作ってから時間経過すると油膜のようなものを形成する、という性質があることは間違いなさそうです。
つまり、SNSにたくさん上げられている油膜が浮いているだけの写真で以て「こんなに農薬が付着していた!」と判断するというのは、明瞭極まりない「誤解」であることをここに確認いたしました。
実際に農薬が落ちているかどうかの真偽は別として、今回の知見を是非皆様の豊かな生活に役立てて頂くとともに、誤発信に係る被害の防止に活用して頂ければ幸いです。
また、条件が揃うのならば是非同様の実験に臨み、その再現性のチェックをお願いいたします。
それでは今回はこの辺りでお暇します。
ありがとうございました。
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