ある方から、肥料や農薬を使う現代より、それらを使わなかった江戸時代の方がより理想的だというご意見を頂きましたので、江戸時代と令和時代をいくつかの項目を挙げて比較してみようと思います。
厳密には江戸時代にも肥料や農薬はあったのですがそこはご愛嬌。
食料自給率
<江戸時代>
江戸時代は基本的に鎖国政策下にあり、食料はほぼ国内で自給自足されていました。米を中心に雑穀(ひえ、あわ、そばなど)や野菜、魚介類が主な食料源で、輸入に頼ることはほとんどありませんでした。
ただし地域によっては生産力に差があり、凶作時には自給が困難になることもあったようです。当時の厳密な「食料自給率」の統計は存在しませんが、実質的には100%に近い状態だったと考えられます。
<令和時代>
2023年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%です。米や一部の野菜・魚介類は国内生産が強いものの、小麦、肉類、大豆などは輸入に大きく依存しています。これはグローバル化が進み、食料供給が多国間に広がっているためだと考えられます。
● 江戸時代は自給自足が基本だったのに対し、令和では国際貿易に依存する構造に変化しています。
人口
<江戸時代>
江戸時代の人口は約3000万人前後で安定していました。これは当時の農業生産力や社会構造がそれ以上の人口を支えきれなかったため。出生率こそ高いものの乳幼児死亡率や病気による死亡率も高く、人口増加は抑えられていました。
<令和時代>
2025年3月時点での日本の人口は約1億2300万人です。ただし高齢化が進み人口は減少傾向にあります。出生率は低く(合計特殊出生率1.3程度)、平均寿命は延びています(約85歳)。
● 江戸時代後期の人口は令和の約4分の1程度であり、社会規模が大きく異なります。現代は人口密度が高く都市化が進んでいる点も特徴です。
飢饉
<江戸時代>
飢饉は頻繁に発生していました。特に有名なのは「天明の大飢饉」(1782~1788年)や「天保の大飢饉」(1833~1839年)で、冷害や洪水などの天候不順が原因で米の収穫が激減し、数万人~数十万人が餓死したとされています。農村部では食料備蓄が不足しやすく、幕府や藩の対応も限定的でした。
<令和時代>
調べたところ、現代日本では飢饉は事実上発生していないようです。物流網の発達、食料輸入、冷凍・保存技術の進歩により、局地的な災害があっても食料供給が途絶えることはほぼありません。ただし、気候変動や戦争や貿易制限等の国際情勢による食料危機のリスクはたびたび議論されています。
● 江戸時代は自然災害に脆弱で飢饉が日常的な脅威だったのに対し、令和では技術とインフラがそれをほぼ解消していると言えます。
普段食べていたもの
<江戸時代>
庶民の主食は米や雑穀で、副菜として大根、かぶ、豆腐、漬物、味噌汁、魚(干物や塩漬けが多かった)が一般的で質素な食生活でした。肉は仏教の影響や幕府の方針でほとんど食べられず、鳥や兎などの「薬食い」がまれにあったようです。
武士や富裕層は米飯に加え、新鮮な魚介類や季節の野菜、時には鯛やうなぎ等の贅沢な料理が食卓に上ることもあったようです。
江戸時代は地域差が大きく、沿岸部では海産物、内陸部では川魚や山菜が多かったのは自明でしょう。
<令和時代>
一般的な食事における主食は米やパン、うどんやパスタ等の麺類。肉(牛、豚、鶏)、魚、野菜、乳製品がバランスよく摂取され、コンビニ弁当や外食も日常的です。小麦やチーズ、果物等の輸入食材や加工食品が広く普及し、イタリアン、中華、ファストフードなど豊かで食の選択肢が豊富に。
● 江戸時代は質素で地域産のものに依存した食事が中心だったのに対し、令和では多様性と利便性が際立ち、グローバルな食文化が浸透しています。
平均寿命
<江戸時代>
江戸時代の平均寿命は公式な統計がないものの、歴史学者の推計では約30~40歳程度とされているようです。ただし、これは乳幼児死亡率が非常に高かったことが大きく影響しており、生まれた子の半数近くが5歳までに亡くなることも。
成人まで生き延びた場合は50~60歳まで生きる人も珍しくなく、70歳以上まで長寿を全うする例もありました。 江戸時代は生活環境や医療の未発達が寿命を短くする要因だったと言えるでしょう。
<令和時代>
厚生労働省の推計では2025年時点での日本の平均寿命は男性約81歳、女性約87歳です。世界トップクラスの長寿国であり、高齢化が進んでいます。乳幼児死亡率はほぼゼロに近く医療技術の進歩や公衆衛生の向上により、多くの人が80代以上まで生きるのが一般的となっています。
● 江戸時代は乳幼児死亡率の高さが平均寿命を押し下げていたが、令和では医療と生活環境の改善で大幅に延びています。
主要死因
<江戸時代>
① 感染症:天然痘、コレラ、赤痢、結核などがありました。特に江戸や大阪等の都市部では衛生状態が悪く、疫病が流行しやすい環境でした。天然痘は子供の死亡原因として特に深刻で、ワクチン導入前は壊滅的な影響を及ぼしたようです。
② 栄養失調・飢餓:飢饉が頻発し、特に天明や天保の大飢饉では餓死者が続出しました。普段の食事も栄養バランスが悪く、慢性的な栄養不足が病気への抵抗力を下げていました。
③ 出産関連:産褥熱や難産による女性の死亡が多かったようです。助産技術はある程度発達していたが、現代のような医療介入はありませんでした。
<令和時代>
① がん:2023年の統計では死亡原因のトップ(約27%)。肺がん、胃がん、大腸がんなどが多く、高齢化に伴い増加傾向。早期発見・治療技術は進んでいるが、依然として最多。
② 心疾患:心筋梗塞や心不全が2位(約15%)。生活習慣病(高血圧、高コレステロール)と関連が深い。
③ 脳血管疾患:脳卒中などが3位(約8%)。こちらも高齢化や生活習慣が影響。
④ 老衰:高齢者が自然に亡くなるケースが増加(約4%)。感染症は抗生物質やワクチンで劇的に減少し、現代では新型コロナウイルス(COVID-19)のような例外を除き死因上位にはほぼ入らない。
● 江戸時代は感染症と飢餓が命を奪う主因だったのに対し、令和では生活習慣病や老化に伴う疾患が中心。医療の進歩で「防げる死」が減ったことが大きな違いです。
まとめ
如何でしたでしょうか。
江戸時代は自然環境や医療の限界が生活を大きく制約していましたが、令和では技術と社会インフラがそれを克服し、長寿と多様な生活を実現していると言えます。
あくまで単純な比較はできませんが、現代より江戸時代の暮らしの方が良かった、とは必ずしも言えなさそうです。
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