先日、かねてより聞いていた「農家は自分が食べる分には農薬を使わない」という噂が果たして本当なのか、Twitterのアンケート機能を使用して検証してみました。
総評
「農家は自分が食べる分には農薬を使わない」の真偽を問う選択肢として、
① 自分が食べる分には農薬を使わない
② 自分が食べる分にも農薬を使う
③ そもそも自分が食べる分として区別して作っていない
④ 農家ではないが投票の結果を見たい
という4つの項目を置いてTwitterにて聞いてみました。結果は冒頭にもありましたように、
① 161票(4.7%)
② 681票(19.9%)
③ 1231票(36.6%)
④ 1342票(39.3%)
となりました。検証にあたり④の項目を除外しますので、総数2,073票において
① 食べる分には農薬を使わない(7.76%)
② 食べる分にも農薬を使う(32.9%)
③ そもそも区別しない(59.4%)
となります。
また、コメント数は75件に上りました。
以上から、アンケートにお答え頂いた農家さんの約6割がそもそも作物の中で自分の食べる分を区別して作っておらず、さらに約3割の農家さんが自家用を分けて栽培していても同様に農薬を使っており、自分が食べる分に農薬を使わないという農家は全体の1割にも満たないという結果が導き出されました。
コメントに対する考察
コメントでは、わざわざ自家消費用に区別などしない理由に、傷ものやハネだし、即ち規格外となったものを自家消費に充てるというケースが多く上がりました。確かに、概ね劣化の早い規格外品を自家消費できる生産者の立場としては、敢えて自家用の区画を作付けする必要性がないというのはなるほど確かにその通りでしょう。
農家さんの「自家用を区別して栽培なんてそんなめんどくさいことしないですよ」という趣旨のコメントが45件以上寄せられていることからも区別しないことが経営上の選択として一般的なのだと思います。
また、同様に「めんどくさい」という理由で、家庭菜園を区画として持っている農家さんがそこに農薬を敢えて使わない、という事例も見られました。これは、農薬散布には労力とコストがかかり自家用のものにまでわざわざ使わない、またそのような時間的余裕もないという意見が散見されました。
寧ろ売り物でないということで登録適用外の農薬の余りを使う農家さんもいたのには少し驚きました。笑 まあ、自分で食べる分には良いでしょうし登録適用外=直ちに毒性発現ではないのでこの辺りは其々の自己責任で大丈夫だと思います。
詰まるところ、「自家用だから無農薬にする」という趣旨で農薬の使用を控えている農家さんはほぼほぼいないと考えて良いでしょう。
また、「自分が危険と思うものを販売するわけがない。そもそも基準値超過の残留農薬を出してしまったら事業の存続に関わる」というコメントも。定められたルールをしっかり守って防除を行なっている農家さんの意識の高さを感じますね。
それと、以外なところで養鶏勤務の方から次のコメントをいただきました。
「卵も洗浄で薬品使います。農薬ではありませんが、消費者に言いたいのが食べ物になる前の物て思っている以上に汚いですよ?卵には糞、体液、ホコリなどなどついています。そのまま提供しても一般人には保存管理はできないと思います。だから、薬品を使います。」
確かに「薬」というワードに敏感になる今般、それ以外のものを見落としているようなきらいを感じずにはいられません。
妥当性と信頼性は?
このアンケートが”Twitterを利用している農家もしくは消費者の方”によって得られたという特性を考慮しても、「農家は自分が食べる分には農薬を使わない」という命題は「偽」であるという結論で間違いなさそうです。
ただあくまで私のフォロワーさんとその周りの方々からの投票であること、SNSという限られた世界でのデータであることは留意しておく必要があります。
それにしても何より3,415票という多くの票数を頂き、その中で約1,200人に及ぶ農家以外の方が興味関心を持って当該アンケートの4番目の選択肢に投票して頂いたことに厚く感謝申し上げるとともに、それほど一般の方も気になる命題であったのだなと実感しました。
一方、家庭菜園をやっている方が①の選択肢に投票していたりと農家さん以外の票も多少入ってしまっているようです。
こればかりはどうしようもないのですが、しっかりアンケートの内容が伝わるよう達意な文章を考えなければなりませんね。
それでは今回はこの辺りで。ありがとうございました。
コメント
初めまして、後藤と申します。
私は農業です。
『農家は自分が食べる分には農薬を使わない』と言うフレーズは、消費者の皆様からすると、衝撃的なフレーズだと思います。
ある有名なお医者様が、繰り返し繰り返し、このフレーズを発信されているのを見てます。
農家として、『そんな農家さんは極少ないと思うんだけどなぁ』と、忸怩たる思いでおりました。
きちんと反論する材料を持ち合わせず、何も出来ない自分に情けなく思っておりました。
この様な形で、検証して頂き、考察を発信されている事に感謝申し上げます。