#76 フィリピンと日本の米事情

農業

フィリピンでは政府と農家の米価を下げる努力によって米農家の売渡価格をなんと5kg250円に抑えているとのこと。確かに比べると日本の米農家への売渡価格は不当に高く見える。政策でコメの関税を下げ農家は競争力をつけているらしく、参考になるかも?どうだろうか?

指摘①フィリピンの方が日本より平地が少なく条件が悪い。

平地は即ち平野部を指すと考えると、日本は関東平野(17,000㎢)や石狩平野(4,000㎢)などが有名で全国で30000㎢を超えるようだ。これは国土面積の15%程度。ではフィリピンはというと、

一大穀倉地帯の中央ルソン平野(11,000)㎢、北ルソンのカガヤン平野(9,000㎢)等があり、全国で40000㎢超の平地がある。詳細なデータが乏しいため断言はできないが、少なくとも「日本の方がフィリピンより平地が少ない」という事になりそうだ。

しかし農業をする条件の良し悪しは平地の多寡だけでは決まらないだろう。では作付体系、つまり1年で何回栽培できる?熱帯モンスーン気候のフィリピンでは年2~3回の作付けが可能。日本は年1作が基本。従って、面積あたりの収量はフィリピンの方が多い。

やはりどちらかというとフィリピンの方が条件が良さそうだ。

指摘② 価格を下げる努力…輸入関税引き下げ→農家が競争力を獲得

フィリピンでは2019年の米関税化法(RTL)によって輸入数量制限を撤廃し、35~40%の関税を課す制度へと移行している。

これは米の価格安定と市場の自由化を通じて消費者利益を高めることを目的としており、2024年にはさらに関税が15%に引き下げられた。農家は競争力を獲得できているということなのだろうか?

ところで、日本の稲作農家の7割が兼業農家なのに対しフィリピンでは3割以下なので、

専業で生活できているように思える。だが実際は世帯単位で農業は営むものの、家族それぞれが異なる収入源を持ち全体を支える「実質的兼業」が主流になっている。父親が主に農業を主として行い、子どもが海外に出稼ぎに行き毎月送金、母は個人商店を経営、祖父母が家事をこなす…

「一家としての農家」だが、世帯収入の大半は農業以外からという形。果たしてこれは競争力を獲得できているのか甚だ疑問。

色々数値の取り方はあるけど、日本の米農家(販売農家)の平均農業所得は200万円弱なのに対し、フィリピンの農家の所得はなんと25~40万円らしい。しかもこれは世帯単位の数字。

日本の農家の世帯人数が約2.5人なのに対し、フィリピンは4.5人。これでは農業だけで生活できるはずもないだろう。フィリピンの農家は輸入の自由化と関税の引き下げによって競争力を奪われ、安い消費者価格の犠牲になっていると捉えた方が良いかも知れない。

現地の声は

実際、いくつかの報道によればフィリピン国内の農家は関税引き下げにより深刻な打撃を受けているようだ。2024年11月のロイター通信社の記事によれば、関税を原資とする「米競争力準備基金」の支援が農家に行き渡っておらず、価格低迷と異常気象も相まって多くの米農家が廃業に追い込まれたことがわかる。

約10万軒の農家が政府にコメ関税化法の撤廃と国内のコメ生産力強化、農家の所得支援を求める嘆願書に署名したという。他方、関税の引き下げは輸入業者の利益になり消費者価格の引き下げにはなっていないという主張も見られ賛否が分かれている。

結局のところ、国民の4人に1人が農業に従事するにもかかわらず、フィリピンは現在世界最大のコメ輸入国になってしまった。

というわけでミスリードとの指摘には

日本よりも平地が少なく条件が悪い→誤り。逆。

農家が競争力を獲得→誤り。依然農業外収入への依存。

というミスリードがあったようです。

私はフィリピンのようになってしまうのは嫌かも。

皆さんはどう思いますか?

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