練乳とイチゴって美味しいですよね。私の大好物です。酸っぱいイチゴに練乳は格別です。
さて、前回記事では日本の農作物が「農薬まみれ」と一部の方から言われていることを確認し、とにも角にも日本は果たして世界有数の農薬大国で、トップクラス(あるいは1位)の農薬使用量を誇る国なのかという疑問を投げかけさせて頂きました。
「農薬」と「耕地」の意味するところを明らかにしたということで、今回はいよいよ実際にFAOのサイトを活用して農薬使用量の実態に迫っていきたいと思います。
2020年の農薬使用量を調べる
それでは、英語翻訳サイト「DeepL翻訳」を携えてFAOのサイトに潜っていきましょう。
こちらがFAOのメインページ。色々なデータを調べられるので好奇心旺盛な方は是非一度足を運んでみてくださいね。
さて、早速 Pesticides indicators (農薬の指標)のページに飛び、国名・要素・種目・年度を選択します。
① 国名(countries):全ての国 ② 要素(elements) :耕地面積あたりの使用量 ③ 種目(items) :農薬(総量) ④ 年度(years) :2000年から2020年(せっかくなので)
こんな感じでセレクトしました。これらを選択してデータをcsvかxlsxで出力することができます。不要な項目を削除するなどして整理したものが下図になります。
さて、このデータを作るだけでも割と時間がかかってしまいました(相当お暇な方でない限りお勧めしません…)。ここから色々加工していこう意気込んでいたのですが、ここで私は明らかな違和感を覚えます。
圧倒的な違和感。おかしい、あの国やあの国が入っていない!
違和感の正体
実は私、何を隠そう2年ほど前に一度農薬使用量について一通り調べていて、その時の表をぼんやり記憶していたのです。明らかに当時の Pesticides indicators のデータから除外されている国があるのです。この時すぐ思いついたのは上位にランクインしていたはずのコスタリカとバルバドス。
試しに当時あったはずのコスタリカのデータのみ抽出を試みたところ、「No Data」のアナウンスが出てきました。
なぜ削除されているのか理由は分かりませんが、私としてはこのまま数カ国が除外された状態で検証を続けるのは何とも気持ちが悪いです。何とかせねば。
というわけで、Pesticides indicators のメタデータ(大元)になっている「Cropland (耕地面積)」と「Pesticides use(農薬使用量)」のページに飛び、消えてしまっている国の数値を拾えるか確認してみました。
この際、各項目に情報がありながら、Pesticides indicators に組みれられていない国家を全て洗い出すべく、「Cropland」と「Pesticides use」の各ページからデータを抽出し、全ての国の10年分のデータを数式に入れながらエクセルにまとめる作業を行いました。
つまり、Pesticides indicators から得られているデータをメタデータから自力で全て計算し直します。ドン引きするような途方もない作業量でしたが、こんなところで妥協するわけにはいきません。ちゃんとした説明表記があれば諦めがつくのですが、極限まで妥協しない農薬検証に甘えは許されないのです。
さて、一例としてコスタリカの部分を上げました。何だ、普通に数値入ってるではありませんか。なぜPesticides indicators の方に参入されていないのか、いまいち判然としません。コスタリカ同様農薬使用量と耕地面積のデータがありながら Pesticides indicators に無かった国や地域はバミューダ諸島、フェロー諸島、コスタリカ、トリニダード・トバゴ、バルバドス、コロンビア、バハマ、マルタの8カ国でした。
これらの理由について、Pesticides indicators のページに Update history(更新履歴)のリンクがあったので確認したところ、毎年のフルアップデートに加えて
① 2018年12月06日に inclusion area aggregate totals (包含地域集計) ② 2021年07月27日に outlier values removed(外れ値の削除) ③ 2021年12月10日に revision to Mauritius and Japan(モーリシャスおよび日本への修正)
計3つの個別修正が入っています。私が以前データを抽出したのは2021年の6月頃なので、②と③の修正が影響していると考えられます。②について、他の測定値から極端に離れた値を統計学では「外れ値」や「飛び値」と呼び、その原因が明らかになっているものを「異常値」と言います。
それぞれの国の数値について説明が書かれているカントリーノートもあったので確認しましたが、Pseticides indicators からの削除理由は確認することができませんでした。
8つの国のうち、
バミューダ諸島 :イギリスの海外領土 フェロー諸島 :デンマーク領土 トリニダード・トバゴ:イギリス連邦加盟国
ということで、これらは本国の計算に組み入れられている可能性があります。ただ、その真偽を確かめる術がないのと、2018年12月06日にあった包含地域集計修正にも関わらずメタデータ上に残っていた地域というのもあり、とりあえずそのまま計算します。
また、それ以外の5カ国については明確な独立国家ですので特段 Pesticides indicator に入れても良さそうなのですが…よく分からないですがとりあえず全部入れ込んで一覧にしてしまいましょう。もしこれらの国のいずれかが「外れ値」であり、データ分析に著しい悪影響をもたらす場合には除外することにします。
調べているとこんな事例も
これも私の作成した表ではないのでご注意ください。
農薬使用量の一覧を作る過程でSNSを色々と調べていると、こんな画像を引用している方がいらっしゃいました。なるほど、この表からは2019年では日本は第26位になっており、「世界トップクラスの農薬使用量」とは言えないことになりそうです。
…が、少しこれには事情があることをたまたま私、知っていました。
2019年のデータが出て間もない2020年のいつだったか、実は私もまたFAOを漁り農薬使用量のデータを調べていたのです。その時まとめたのが下の表になります。
上部が切れてしまっていますが、最右欄の2019年の農薬使用量は確かに日本は6.85kg/haであり、ランキングにすると26位に私が作ってもそうなりました。
ただ、2000年から全ての数値を追っていたおかげで少しおかしな点があることに気づいたのです。ご覧いただくとわかると思うのですが、それまで10kg/ha以上で推移していた使用量が2019年だけ極端に少なくなっているのに違和感を覚えました。
2019年は特段農薬使用量が少なく済む気候という感じではありませんでしたし、そうだったとしても前年度から約半減とまではいかないでしょう。何か農薬使用を規制する法改正があったわけでもありません。これこそ異常値ではないかと考えて農薬を取り扱う会社の知人に聞いたりしたのですが、結局原因は不明でした。当時私が途中でグラフ作成を諦めた理由の一つにこの謎の激減があったというわけです。
案の定その年の12月にモーリシャスと日本に対して数値の修正が入り、日本に関しては6.85kg/haから11.82kg/haに変更されているようですね。この修正された正しい数値で以てデータを作成していこうと思います。
さて、色々あって結局今回でもデータ作成に着手できませんでしたが、やっと次からできそうです。
極限まで妥協しない農薬調査なので致し方ありませんね。
それでは今回はここまで。ありがとうございました。
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