【論考】#8 農作物の”食味の良さ”はどこから?

農業

先日、Twitterにて「農作物の食味の良さを決める第一の要因とは何か?」というアンケートを実施しました。投票総数1,980票、コメント数70件以上と非常に多くの方にご回答を頂けたこと、この場を借りて感謝申し上げます。

今回は、アンケートの結果を基に様々な視点から考察してみたいと思います。コメントで頂いた意見に関してもできるだけ取り上げていきたいと思いますので、参考までにどうぞ。

留意事項:食味の良さとは

アンケートを分析するにあたり、設問文にもある「食味の良さ」というものをはっきりとさせておかなければなりません。食味とは読んで字の如く「食物の味」です。そしてそれが「良い」ということは、つまり食した時に人が「おいしい」と感じられるかどうかということに相違ないでしょう。ただ、この「おいしい」が実に厄介であることは最早自明の事実と言えます。お察しの通り、「おいしい」の明確な基準など、究極的には存在しないのです。それこそは個々人の感覚に依るものであり、自分にとっては美味でも、ある人にとっては不味いということは往々にしてあり得るのです。味覚の基本感覚(甘い・塩からい・酸っぱい・苦い)の大小を一概においしさと関連付けることは簡単ではありません。うろ覚えですが昔、あるテレビ番組で「ゴーヤ」を使った興味深い実験を目にしたことがあります。一般的(?)に敬遠されるゴーヤの苦味を、ある物質を用いて打ち消したものを食べてもらい、その食味を評価してもらう実験でした。番組スタッフには結構好評価でしたが、沖縄県の人たちに食べてもらうと、「全然美味しくない」「こんなのはゴーヤじゃない」等、非難轟々だったことが印象的でした。つまり、おいしいかどうかなどは、結局のところ個人の感覚次第というところに帰結するのかもしれません。しかしこれでは検証も何もなくなってしまうので、何となくでも方向性を固めておこうと思います。

 農作物で考えれば、フルーツと野菜におけるそれぞれの「おいしさ」はその評価内容は個人の感覚を排除し切れないにしてもある程度形容できそうです。りんごやぶどうは、甘さが強いほどおいしいという評価が得られやすいだろうし、キャベツや白菜は、食感の良さがおいしさと強い結びつきがあると推定できると思います。とはいえ、フルーツでも食感がグニャリとしていたりスカスカでは美味しくないし、よく採れたての野菜を丸齧りして「甘い!おいしい!」と評価したりもします。農作物それ自体の食味を楽しむフルーツと、調理加工が殆どの野菜とでは、また少し事情が違いそうです。今回のアンケートでも、コメント頂いた農家さんの栽培品目に注目しても面白いかもしれませんね。

以下、食味の良さについてあくまで「個人の感覚」に依るということを念頭におきながら分析を進めていきたいと思います。

概評

今回、作物の食味の良さを決める第一要因は何か、という趣旨のアンケートをTwitter上にて行いました。手軽にアンケートを行うことができるこの機能、実にありがたいですね。WEB上で「農業センサス」なる調査を行えば、現行のものとはまた違った標本が得られるのではないかと妄想せずにはいられませんが…。と、話を戻せばアンケート投票総数1,980票にも及ぶ回答が得られたことは重ねて感謝申し上げたい。これを現実世界でやろうとしたら途方もない労力がかかったこと受け合いです。

注目の食味の良さの第一要因は、1番目が「土壌地質」が40.1%、2番目の「作物品種」が30.7%、3番目が「肥培管理」16.0%、4番目が「水分管理」13.3%となりました。

私のフォロワーさんとその周辺では、およそ土壌地質と作物品種が食味の良さに関わっているのではないかというざっくりとした見解が読み取れたことだけでも価値があります。もちろん、「農業寄り」の方々の意見がより多く入っていると推測されますが、一般消費者の方の回答もある程度入っていると考えても問題はないでしょう。

考察と持論

農家さんからのコメントには「作物品種」に言及するものが多かったのが印象的です。私の栽培するキャベツやタマネギでも、どうやっても超えられない品種の壁というものの存在はひしひしと感じます。複数の農家さんの意見と同様、まず「作物品種」という食味の固定値的なものがあり、それを「土壌地質」「肥培管理」「水分管理」でどれだけ引き出すかというのが私の個人的見解でした。

翻って全体の統計を見れば、最も多い回答は「土壌地質」という興味深い結果となりました。これは推測ですが、非農家の方々にとって「作物品種」というものの違いについてそもそも縁遠いところにいるのではないかと思ったのです。家庭菜園等では、ネットで色々と調べてみると「土づくり」というものが重視される傾向にあり、色々な「作物」を育てるにしても色々な「品種」を育てる方というのはそれほど多くないのではないでしょうか。ホームセンターで購入することのできる種苗もラインナップはそれほど多いというわけではありません。

斯様な事情から、全体では「土壌地質」を重視する傾向となったのではないかと考えています。もちろんそれが間違っているとも思いません。どんなに優れた品種であろうと、著しく痩せた土壌では十分な生育は望めないでしょう。ただ、食味を決める「1番」の決め手となると、やはり作物品種なのかなというのが正直なところです。日本人の主食である米も、昔から品種改良が進められその食味は限りなく良くなったと聞きますから、ある程度説得力もありそうです。

別件ではありますが、野菜や果物については「水分」も食味に関わる重要なものだと思います。当然、収穫して間もない新鮮なものの方が、日にちが経ち萎びれたものよりは美味しいに決まっています。これは万人に共通する認識だと思いますが、やはり食味を決める1番の要因とは言えなさそうです。

こんなところでしょうか。皆様のご意見ご質問などあれば是非よろしくお願いいたします。

それでは今回はここまで。

ありがとうございました。

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