【論考】#1 地床苗とセル成型苗

農業

一大産地である当地域のキャベツでは、大きく分けて2つの育苗方法が採用されています。今回は双方のメリット・デメリットを考えながら最良の選択ができるよう考察したものになります。

比較検討への導入

さて、地床苗とセル苗を、様々な観点から徹底的に比較していきたいと思います。

この三つに分けて比較検討を行いたいと思います。

各カテゴリへはリンクからご覧頂くことにして、本記事では地床苗とセル苗の概要を説明していきたいと思います。

地床苗

芯が太く、根量も多いのが特徴

地床苗は、畑地に育苗スペースを用意し、畝を立て直接種を播く方法です。大地に種を撒いて育てるの方法は、昔から各作物の産地ではこの地床苗が広く行われてきました。近年では、育苗管理が容易と言われる後述のセル成型苗が普及している様です。

セル成型苗

セルという一つの区画で育てるので小さめだ

セル成型苗は小面積で大量の苗を効率よく育苗するために開発されたと言われています。セルトレイは根鉢が一定の形になるよう作られたもので、プラスチックなどが使われており、72、128、200穴のものがよく利用されています。培土はバーミキュライトやピートモス主体のセルトレー用を使い、肥効が2週間程度の短いものから1カ月ぐらいのものまであります。

いろいろ調べてみても、セル成型苗が育苗難易度の高い地床苗にとって替わる方法として合理的な物だと言う見地から述べている資料が大半でした。これほどまでセル成型苗が普及したのには、やはり地床苗より育苗が簡単だからと言う理由が確認できます。

ウィキペディアには「レタスやキャベツなどの葉菜類ではセル成型苗用の定植機が開発され、 セルトレイから苗を抜き取って植付けるまでの作業を自動的に行うことができるよう になり、野菜生産における省力化に貢献している。」とまで書かれていました。

しかしながら。。

比較に対する疑問

セル成型苗の育苗方法が体系化されている一方、比較している地床苗の栽培方法はひとつの方法として体系化され、広く認識されていたのでしょうか。また、地床苗と言う慣行的栽培方法に疑問を持ち、効率化と省力化を目指して生産者自らの手によって1つ2つと漸次的に改良が施されてきたのでしょうか。

明確な根拠がないため個人的見解までに留めますが、私には地床苗の欠点を克服するために作り手がセル成型苗と言う答えに辿り着いた、と言う様にはとても思えないのです。誤解を恐れずに言うならば、種苗会社やその他農業を取り巻く業界によって完全に別のセクターから生み出されたのがセル成型苗だと私は考えています。これについてはカテゴリ別の記事を見て頂ければご理解に繋がるかと思います。

私が父からいつも教えられていたのは、“農家は、物言う農家でなければいずれ良いようにやられてしまう”と言うざっくりしたものでしたが、農家になり4年が経ち様々な経験をしていく中でその意味がなんとなく理解できてきました。結局、農業における確立されにくい技術、不安定な技術継承、閉鎖的な経営体、同業者の実時間的情報共有の希薄さから、他から見れば”取って食いやすい”業界に見えてしまうのではないかと危惧しているところでもあります。

実は、新規就農者より親元就農者の方が”取って食われやすい”状況にあるのではないかと思っています。親の元による確立(悪く言えば固執)した技術継承による現状改善・打開意思の欠如、死ぬまでハンドルを握る親の継承不全による栽培技術の致命的喪失など、農業に元から近い距離に入ればそれだけ優位に立てるとは限らない現実があるのです。誰の子に生まれるかは誰も選ぶことはできませんが、親の為人ひとつでどうにでもなってしまうのがこの業界の良くもあり悪くもあることだと思っています。

ですから、このように文字にして、言葉にして農家のリアルタイムな情報を共有することには大きな意味があると感じたからこそ、未熟者ながらこうして情報発信に努めている次第です。少しでも多くの方にお読み頂き、自らの今置かれている状況、取り組んでいること、仕事に臨む姿勢等の第三者的な比較情報として取り入れて頂ければ幸いです。

それでは今回はここまで。
ありがとうございました。

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