【論考】#9 JAは誰が変えていくのでしょうか。

農業

私が地域単位で感じるJAの問題の1つに、単位農協の営農指導に携わる人間が数年で人事異動され、長年営農の道を極めたプロフェッショナルとして育たないという現状があります。

営農部門とて組織内に金融機能を持つが故に同一部署に留まれないのではないかと考えますが、営農部の人が急に共済部へ移ったりと、職員・農家ベースでの組織運営とは到底思えない人事異動が目につきます。文字通り、畑違いの部署に飛ぶ。

それまで培ってきた農業に関する知識や技術だけでなく、地域の生産者との情緒的繋がりも異動によって簡単にリセットされてしまいます。

生産者は圃場や施設を持ちその土地に根差した人々であることが殆どなのに対して、JAの職員さんは数年もすればまた担当が代わってしまう。この実態があるかぎり、双方が積極的に歩み寄ろうというモチベーションが起こりにくい環境であることは間違いないでしょう。

金融部門から異動してきた営農指導1年目の職員に何が指導できるのでしょう?これは早い話、農家側が”指導”する羽目になってしまいます。普段指導するはずの人間が、普段指導を求める人間に学びを乞う。極めて非効率的で生産性がなく、そうして教えてもまた数年でどこかへ異動してしまいます

。中には勉強熱心な職員さんもおられますが、同じ単位農協ですら場所により農業の知識や技術は変容するもの。教科書的な学習では限界があるのも事実です。

今でこそ露骨に行われていませんが、金融共済部門が花形とされ、経済・営農はそこから外れた人が就くという風潮さえありました。国内トップクラスの単位農協ですら、です。

ただ、私が申し上げたいのは、だからJAはダメだ、ということではありません。単位農協のトップは組合長、即ち農家です。これを踏まえると、農家がJAを一概に批判することは本質的には矛盾しているのではないでしょうか。本来変えるべき、変えられるべき人間が、変えようとしないで、変わらないで不平不満を宣う。そんな場面も見てきました。

色々なしがらみがあるのは容易に想像できますが、そう言ったものにエネルギーを割いて乗り越えていくというのが本当の「農協改革」ではないでしょうか。農家はこの改革に無関心でいてはならないし、JAという組織の成り立ちを踏まえ、自らを含めこれからどうして行くかを考える立場にあるのだと私は考えています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました