今般話題のベジセーフ。社長曰く6月17日〜7月17日頃にはHPを完全リニューアルして生まれ変わるとのこと。農作物の生産者として、一消費者として、またベジセーフ使用者(実験用途ですが)として問題点を整理しておきましょう。
なるべくわかりやすく書きますので、これを参考にリニューアルされたHPが消費者に誤解を与えるような表記をしていないか、皆様でもチェックして頂けると幸いです。
色々実験してみた記事はこちら↓
水道水の28倍の洗浄力?
エビデンスには11種類の食材の洗い水を検査して、「水道水よりもベジセーフの方が28倍以上の農薬や防カビ剤を落としました」と言う文言があります。そしてその下に小さく「※ 残留農薬基準値であれば人体には影響がないとされております。」と言う注釈。
さて、ここでの疑問は3つ。
1. なぜ11種類の食材をまとめて洗った水を検査したの?
農薬・防カビ剤の洗浄実験では11種類の食材をまとめて洗った水を検査しています。写真を見る限りセロリ、レモン、パプリカ、グレープフルーツ、シソ、ブロッコリー、レタス、ミニトマト、ブルーベリー、ホウレンソウ、キュウリ。
HPによるとレモンとグレープフルーツのいずれかないし両方は輸入されたものだそうです。まとめて洗ってしまうと、どの野菜からどれだけの農薬が落ちたのかがわかりません。サンプルはそれぞれ詳しく教えて欲しいものです。
また、後述する防カビ剤(食品添加物)は国産農産物には農薬として使用できない物質なので、せめて国産農産物と輸入農産物は分けて検査して欲しいところですね。
2 . なぜ農薬と防カビ剤(食品添加物)をまとめてグラフにしたの?
自分がX(旧Twitter)で指摘する前は「防カビ剤」の表記すらありませんでしたが現在(R6年5月時点)では上のようなグラフになっています。なるほど、これを見るとベジセーフの洗浄力はかなり優れているようです。
でも、「海外から輸入する際に添加される防カビ剤が多く検出された」とあるようにグラフの大半を占めるのは食品添加物である「防カビ剤」。これを併せて「28倍以上の農薬や防カビ剤を落としました」と謳うのは「農薬も28倍落とせるんだ」と言う誤解を生みかねません。
と言うわけで食品添加物である「イマザリル」と「チアベンダゾール」を除外して再構成してみます。
如何でしょうか?これを見るに大体8倍くらいの量の農薬成分が落ちているようですね。結構落ちてると言うイメージは十分な気がします。
普段国産野菜をメインに食べている方にとってはこちらの方が倍率“は”適切かとは思います。倍率は、と強調したのは“量”の部分に注目して欲しいからです。
農産物には「残留農薬基準」が定められており、農薬はその種類ごとに1日に摂取しても問題のない量=「1日摂取許容量(ADI)」が決められています。残留農薬については流通段階で厳しいチェックが入っており、基準を超過する農産物はほぼないと言って差し支えないでしょう。
なので、基準値内の残留農薬を落とすことで、どれだけ1日摂取許容量(ADI)の削減に貢献できるかと言うところがベジセーフに期待する点かと思われます。
と言うわけで1日に摂取した方が良いとされる野菜の量=350gを、子ども(体重20kg)が毎日食べる想定でグラフに示してみましょう。
如何でしょうか。確かに水道水と比べてベジセーフは8倍の量の農薬を落としたかもしれません。しかしそれは1日摂取許容量で言うところのわずか2%未満、成分別で見ても0.2〜8.0%に留まりました。こうして見ると「こんなに差が出る!」と言うのはちょっと憚られてしまいますね。
感性は人それぞれなのでなんとも言えないところではありますが、1日に摂取しても問題のない量の1割にも満たない物質を、敢えてお金をかけて落とす必要はあるのかな?と言うのが私の率直な感想です。
これは体重が20kgの子どもを想定していますので、大人で考えるともっと小さな値になります。最早誤差レベルの残留農薬を心配するのは、そのわずかな農薬と一緒に貴重な時間とお金も落としているように感じてしまいます…。
3 . 水道水で落とせてベジセーフで落とせない農薬があるけど?
よく見ると農薬成分「トルフェンピラド」は水道水で落とせるものの、ベジセーフでは落とせていないと言う結果となっています。これについてHPでは特に言及されていませんでした。
他にも、HPのグラフでは水道水でアセタミプリドが落ちている様に描かれていますが、検査データのPDFには当該成分が落ちている事実の表記はありませんでした。意図があったのかはわかりませんが、少々杜撰ですね。
まとめ
このエビデンスの取り方からは、農薬(と防カビ剤)が「28倍落とせる」と言うインパクト欲しさに敢えてまとめて検査を行い、輸入農産物と国産農産物を一緒くたにしたのではないかと言う疑義を払拭できません。
そもそも、「残留基準値(内)であれば人体には影響がないとされています」と注釈を入れる時点で、その農薬は何のために落としているの?と言うことになってしまいます。
「残留していても健康に影響のない範囲ですが水道水より8倍も農薬を落とせる」
さすがにこの謳い文句では商品は売れませんよね。本質的にこのエビデンスは意味がない気がしています。倍率だけ見せてすごく落ちる!と言う売り方は消費者に誤解を与えてしまうかも。
健康に影響がないのであれば、農薬を落とすことで美味しくなる、えぐみが減るといった「食味の向上」のエビデンス等が落し所としては良さそうです(その根拠が取れるかは別として)。
さて、どのようなHPに生まれ変わるのか期待したいところですね。
<参考HP>
https://vegesafe.jp/shop/
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